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歴史

22億円で落札されたブルーダイヤモンド「青いヴィッテルスバッハ」

1600年代中頃にインドで発見され、長い歴史を渡り歩いてきたブルーダイヤモンド「青いヴィッテルスバッハ」をご存知でしょうか。インド、スペイン、オーストリア、ドイツとたくさんの国で、時の権力者と共に生きてきた青いヴィッテルスバッハは、2008年に約22億円という破格の値段で落札されました。
今回は、その青いヴィッテルスバッハの歴史と、落札に至るまでの経緯についてご紹介します。

神秘の輝きは栄光の証 ヴィッテルスバッハ家に代々伝わる至高の宝

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現在、ダイヤモンドは婚約指輪として女性人気の高い宝石のひとつですが、かつては数々の権力者を魅了した宝石でもありました。もちろん、ブルーダイヤモンド「青いヴィッテルスバッハ」もそうでした。

インドで産出され、研磨された青いヴィッテルスバッハを最初に購入したのは、スペイン王フェリペ4世だとされています。1667年、娘のマルガレータ=テレサを神聖ローマ皇帝レオポルド1世の嫁に出す際、青いヴィッテルスバッハを持たせたそう。
そのマルガレータ=テレサの死後、レオポルド1世は3番目の妻エレオノーレ=マグダレーナに青いヴィッテルスバッハを渡します。そして1720年、エレオノーレ=マグダレーナが亡くなると、その孫マリア=アメリアへと贈られました。
マリア=アメリアは1722年、ヴィッテルスバッハ家のカール・アルベルト(カール1世)と婚約。このとき、魅惑のブルーダイヤモンドはヴィッテルスバッハ家の所有となり、「青いヴィッテルスバッハ」と呼ばれるようになりました。
ヴィッテルスバッハ家は、ドイツの南部「バイエルン」を支配していた一族です。ヴィッテルスバッハ家がバイエルン公となったのは1180年。それ以降、700年以上に渡ってバイエルンを統治し続けた名家です。
その栄光の象徴として掲げられていたもののひとつが、青いヴィッテルスバッハでした。戴冠式で使用される王冠に鎮座して、ヴィッテルスバッハ家の権威を示していたそうです。
しかし、長く続いた栄光も永遠に続くものではありませんでした。1864年にバイエルン国王に即位した狂王ルートヴィヒ2世は激動の国際情勢についていけず、王国を瓦解寸前にまで追い込みます。のちの王も情勢を立て直すことはできず、1918年、ルートヴィヒ3世の退位をもってヴィッテルスバッハ家のバイエルン統治は終焉を迎えます。
青いヴィッテルスバッハについては、その後もヴィッテルスバッハ家の管理下にありました。ところが1931年、突如として、その権威の宝石は姿を消してしまうのです。

歴史的価値か、宝石的価値か。姿を変えたブルーダイヤモンド

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1931年、ヴィステルバッハ家で紛失されて、歴史から姿を消したと思われていた青いヴィッテルスバッハ。しかし、1961年に再び表舞台へと舞い戻ってきます。ダイヤモンドの街として知られるアントワープで宝石商を営んでいたコムコマーが、あるダイヤモンドのリカットの相談を受けます。それが、なんと青いヴィッテルスバッハだったのです。歴史的に大変価値のある宝石だと鑑定したコムコマーはリカットを阻止、青いヴィッテルスバッハを購入します。そしてその3年後の1964年、個人のコレクターに売却したとされています。
こうして王家の所有から個人の所有となった青いヴィッテルスバッハは、さらに長い年月を経て、2008年に再登場。ロンドンで開催されたオークションに出品されたのです。歴史的な価値があり、また美しいブルーダイヤモンドでもあった青いヴィッテルスバッハは高く評価され、約22億円で落札されました。
そこで青いヴィッテルスバッハは、自身の宝石人生において大きな転機を迎えます。約22億円で落札した新たな所有者によって、リカットされたのです。そうしてリカットされた青いヴィステルバッハは、新たにその所有者の名が加えられた「ヴィッテルスバッハ・グラフ・ダイヤモンド」と名前を変えて、世に発表されました。
もともとヴィッテルスバッハ・グラフ・ダイヤモンドは約35カラットあったのですが、リカットされたことで約31カラットになってしまいました。小ぶりにはなりましたが、表面についた傷が消えた透明度が増したことで、、宝石としての価値は上がりました。とはいえ、かつてヴィッテルスバッハ家の象徴として輝いていた頃の姿はもうなく、歴史的な価値が失われてしまった、という見方をする人々もいます。

サムシングブルーにぴったり! 婚約指輪に深く青いダイヤモンドを

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時の権力者を魅了してきたダイヤモンドですが、現在は婚約指輪として広く人気を集めるようになりました。
婚約指輪として人気なのは無色透明のダイヤモンドですが、青いヴィッテルスバッハのようなブルーダイヤモンドも婚約指輪や結婚指輪にあしらう宝石として人気があります。ただし、メインストーンとしてではなく、婚約指輪の内側にあしらうケースが多いようです。
それは、ヨーロッパに伝わる「サムシングフォー」のおまじないからきています。サムシングフォーは、何か古いもの(サムシングオールド)、何か新しいもの(サムシングニュー)、何か借りたもの(サムシングボロード)、何か青いもの(サムシングブルー)の4つを結婚式当日に身に着けた花嫁は幸せになれる、という言い伝えです。このなかのサムシングブルーは花嫁の純潔を象徴しており、周りからは見えないところに着けるのがよいとされています。これが理由で、ブルーダイヤモンドをあしらってサムシングブルーにするのであれば、婚約指輪の内側に忍ばせるのがよいと言われているのです。
もちろん婚約指輪のメインストーンとして使ってもよいので、好みに合わせてデザインを選びましょう。

夜空を閉じ込めたような煌きを婚約指輪に……

無垢な輝きを持つ無色透明のダイヤモンドとはひと味違った、清らかで深みのある輝きを持つブルーダイヤモンド。かつてはヴィッテルスバッハ家も魅了された、その清楚な煌きを、婚約指輪にそっと添えてみてはいかがでしょうか。

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