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カナリアイエローの煌き 伝説のダイヤモンド“バローダの月”

婚約指輪に用いられることが多いダイヤモンド。婚約指輪の定番の宝石となっているそんなダイヤモンドには、歴史に残る伝説のダイヤモンドもいくつか存在しています。世界最大のダイヤモンド原石である「カリナン」、世界最古といわれる長い歴史を持つ「コイヌール」など……。
これらの有名なダイヤモンドには、さまざまな物語があります。今回ご紹介する伝説のダイヤモンド「バローダの月」は、世界的に有名な大女優が魅了されたことで有名になりました。

アメリカの大女優も唸らせる美しい輝き

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バローダの月は、しずく型にペアシェイプカットされたダイヤモンドで、「世界中で最も有名なイエローダイヤモンド」とも呼ばれています。その呼び名の通り、満月のようなカナリアイエローに輝くとても美しいダイヤモンドです。そんなバローダの月が世界的に知られるようになったのは、その輝きはもちろんのこと、世界的に有名な大女優が映画中で身につけたことがきっかけです。

バローダの月を身につけたその世界的な大女優は……「マリリン・モンロー」です。
1926年にアメリカのロサンゼルスで生まれたマリリン・モンローは、20世紀を代表する大女優です。真っ赤な口紅を塗った唇、目元のホクロ、モンロー・ウォークといわれた独特の歩き方などがセクシーで、「アメリカの恋人」、「20世紀のセックスシンボル」などとも謳われました。そんなマリリン・モンローの代表作のひとつであるミュージカル映画「紳士は金髪がお好き(1953年公開)」の中で、彼女は、バローダの月を身につけています。
また、バローダの月を身につけながら、彼女は「ダイヤモンドは女の子の一番の友達」と歌います。この頃のダイヤモンドは裕福な人々が身につけるものであったため、今のように婚約指輪の定番などという身近な宝石ではありませんでした。しかし、この歌によりダイヤモンドは現実的な存在感を知らしめます。
さらに、今では世界的な大女優であるマリリン・モンローですが、この頃はまだ庶民的な女優でありました。そんな彼女がバローダの月を身につけることで、手の届かなかったダイヤモンドが庶民の憧れとなり、ダイヤモンド業界が活性化したともいわれています。現在、ダイヤモンドが婚約指輪の定番の宝石となっているのも、彼女がバローダの月を身につけたことが影響しているのかもしれません。

また、この作品の大ヒットがきっかけとなり、彼女は大女優の道を歩みます。そんなことから、ダイヤモンドは彼女を女優に変身するためのスイッチだったともいわれています。

バローダ地方で採掘され、ローマ帝国の女帝に愛された

マリリン・モンローが身につけることで世界中に名を知らしめた「バローダの月」ですが、バローダの月は彼女が身につける遥か昔から存在していました。

バローダの月が採掘されたのは、インド北西部にあるバローダという地域です。バローダの月という名前は採掘された地域に由来しているのです。月の光のように美しく輝くイエローダイヤモンドは、非常にめずらしいものであったため、当時その土地を制していたマハラジャのガエクワド家が所有者となりました。その後、長い間秘蔵とされていたバローダの月ですが、18世紀になると神聖ローマ帝国の女帝マリア・テレジアの手に渡ったとされています。彼女の手に渡った経緯は定かではありませんが、一説によると、彼女の父親であったカール6世の時代からガエクワド家と交易があったそうで、その時に譲り受けたのではないかといわれています。
ガエクワド家から、ハプスブルク家のマリア・テレジアの手に渡ったバローダの月は、彼女によって大切に保管されます。彼女は、宝石をこよなく愛す人といわれており、これまでに残されてきた肖像画には、彼女とダイヤモンドが一緒に描かれているものも存在します。そんな彼女は、たくさんの宝石を所有していましたが、その中でも特にバローダの月は大切にしていたようで、大切に引き継がれていました。
彼女も、バローダの月が放つ月のような美しい輝きに魅了されていたのでしょう。

再びインドに戻り、マリリン・モンローへ

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その後1860年代には、ハプスブルク家の元を離れ、バローダの月は採掘国であるインドへと渡ります。
かつて、バローダの月を有していたマハラジャのガエクワド家が、買い戻したのです。バローダの月を買い戻したムルハルラオ・ガエクワドは、熱狂的な宝石コレクターであったとされていました。そんな彼にとって、バローダの月は喉から手が出るほど手に入れたいものだったのでしょう。バローダの月の買い戻しには、莫大な財力が利用されたといわれています。
しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発。当時のインドはイギリスの統治下にあったため、インドも戦争に参加しなければならなくなってしまい、それによってガエクワド家は経済的に苦しくなってしまいます。そこで、財政の立て直しのためにバローダの月を含めた様々な宝飾品を手放してしまうのです。
その後、バローダの月の行方は不明となっていたのですが、それから約40年後の1953年に、マリリン・モンローが身につけるという予想外の形で再び姿を現します。また、これがきっかけとなり、バローダの月の知名度は世界中に広がります。

今では、婚約指輪の定番のダイヤモンドですが、バローダの月のように歴史に残るダイヤモンドも存在しています。婚約指輪や結婚指輪は一生に一度の大切なジュエリーであるため、婚約指輪を選ぶ際には、婚約指輪のダイヤモンドの色や大きさなどさまざまな点をチェックすることでしょう。色や大きさなどが大切なのはもちろんですが、婚約指輪を身につけることで素敵な夫婦の道を歩めるような、気持ちを高めてくれるような、婚約指輪に出会いたいものです。

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