歴史

ダイヤモンドを世界で初めて身につけた女性 “アグネス・ソレル”

婚約指輪にも使用されている、愛を象徴する宝石“ダイヤモンド”。現在では多くの女性を美しく飾り立てていますが、1400年頃のヨーロッパでは、王族や貴族の男性が権力を誇示するために身につけていました。聖母マリア以外の女性は、ダイヤモンドを身につけることを法律で禁止されていたのです。しかし、そんななかでダイヤモンドを身につけた女性がいたことをご存じでしょうか。
ここでは、世界で初めてダイヤモンドを身につけた女性“アグネス・ソレル”についてご紹介します。

“美しの貴婦人”と讃えられた伝説の美女

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“アグネス・ソレル”という女性を知っている方は少ないかもしれません。彼女は麗しい美貌の持ち主であり、世界で初めてダイヤモンドを身につけた女性とされています。

アグネス・ソレルが生まれたのは、1422年のこと。イタリアのフロントという町が出生の地だとされていますが、出自ははっきりとは分かっていません。「貧しい貴族の出自である」、「一兵士の娘である」という説も残っており、さまざまな推測がなされていますが詳細は謎に包まれています。
アグネス・ソレルは、ナポリ王“レナートⅠ世(ルネ・ダンジュー)”の侍女だったとされています。ソレルが20歳のとき、レナートⅠ世に同行してフランスのトゥールーズに出向いた際、フランス国王“シャルル7世”と出会います。シャルル7世は、ひと目でソレルの美しさの虜に。シャルル7世に見初められたソレルは、フランス初の公的な寵姫としてフランス王家に迎えられることになります。ソレルとシャルル7世のセンセーショナルな愛が、当時のフランスを大きく揺さぶったことは想像に難くありません。

アグネス・ソレルは美しいだけでなく、聡明であったともいわれています。政治に積極的に参加し、重臣として会議へ参加することはもちろん、戦地にも同行するなどとてもアクティブな女性でした。実際にソレルは、軍事費を増やしてイングランド軍を撃退するように進言しています。それにより、1449年にはルーアンを、1450年にはノルマンディーを奪回し、1453年のカスティヨンの戦いでイングランド軍を破るに至ります。
シャルル7世が勝利王と呼ばれるようになったことや、長く続いた百年戦争を終結させた真の立役者はアグネス・ソレルだったとされています。

そんな美しく聡明なアグネス・ソレルですが、4人目の子どもを身ごもっていた28歳のときに非業の死を遂げています。赤痢と診断されましたが、その突然で不可解な死に毒殺ではないかという噂が流れたほどです。
2005年にソレルの遺体を調べた研究チームにより、水銀による中毒死だったことが判明しています。検出された量の多さから毒殺の可能性は否定できませんが、当時の化粧品には水銀が使用されていたこともあり、真相は謎に包まれています。

ファッションリーダーとしての顔

美しく聡明なアグネス・ソレルにシャルル7世はたくさんの宝石を贈ったとされており、そのなかにはダイヤモンドも含まれていたそうです。当時、ダイヤモンドを女性が身につけることは法律によって禁止されていましたが、ソレルを寵愛していたシャルル7世の命によりこの法律は撤廃されたと伝えられています。こうしてソレルは、ダイヤモンドを初めて身につけることを許された女性となったのです。
その後、アグネス・ソレルはダイヤモンドをファッションに取り入れるようになり、少しずつカリスマ的な魅力で宮廷のファッションリーダーとなっていきます。
アグネス・ソレルは、身体のラインが強調されるようなタイトなデザインのドレスを好んで着ていました。そんなソレルのファッションのなかで最も有名なものが、常に片方の胸を露出するという大胆なドレススタイルです。その斬新で艶やかなファッションに身を包んだソレルをモデルにした絵画は多数残されており、シャルル7世が好んで描かせていたそうです。片方の胸を露出するこのファッションは、宮廷女性がこぞってマネをしたため教皇から苦情があったとされています。

ダイヤモンドの婚約指輪がもつ価値

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美しさ・知性・カリスマ性を併せ持っていたアグネス・ソレルは、ダイヤモンドの歴史に大きく関わる人物といえます。彼女がダイヤモンドを身につけたことで、男性の権力誇示の道具に過ぎなかったダイヤモンドは、瞬く間にアクセサリーとしての価値を高めました。ちなみに、アグネス・ソレルをモチーフにした婚約指輪などのアクセサリーが登場していることからも、ソレルがいかにダイヤモンドと関係が深いかということを伺い知ることができます。

現在では、ダイヤモンド=婚約指輪としての認識が強く、世界中の女性が憧れる宝石となっています。女性が気軽にダイヤモンドを身につけられるようになったことや、男性から贈られるダイヤモンドの婚約指輪が女性にとってステータスとなっているのは、もしかしたらアグネス・ソレルが作り上げた歴史が関係しているのかもしれません。婚約指輪はもちろん、ダイヤモンドがあしらわれたアクセサリーを身につける際には、その輝きのなかにアグネス・ソレルの面影を探してみてはいかがでしょうか。

婚約指輪に、枯れない愛を込めて

アグネス・ソレルをはじめ、歴史の人物たちを美しく飾り立ててきた“ダイヤモンド”は、現在では婚約指輪や結婚指輪に多用されています。さらに、愛を象徴する宝石であることから婚約指輪にぴったりだとされるダイヤモンドは、多くの女性から人気があり、婚約指輪のみならず多くのアクセサリーが販売されるに至っています。
初めてダイヤモンドを身につけた女性“アグネス・ソレル”は寵姫でしたが、シャルル7世から美しいダイヤモンドと枯れることのない永遠の愛を受け取った唯一の女性だといえます。絶大な愛をその身に受けた美しの貴婦人は、枯れない愛と美しさをそのままに、ダイヤモンドのなかで生き続けているのかもしれません。

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